先日、トランプ大統領宛に送付された小包からリシンが検出された事件が発生しました。
犯人はこの「リシン」を使って大統領を殺害しようと考えていたようです。
ここまでニュースを聞いて少し疑問に思って方は少なからずいるはずです。
「リシンで人は殺せるのか」と。
中学や高校の化学の授業や、もしかすると家庭科の授業で「リシン」というワードを聞いたことがあるかもしれません。
学校で習い、おそらくワードに馴染みのある「リシン」は、今回の事件に使用された「リシン」とは別物です。
それもそのはず。「リシン」は二種類存在するのです。
トランプ大統領殺害未遂事件
トランプ大統領宛に送付された小包からリシンが検出された事件が発生しました。
リシンが入った小包はトランプ大統領宛に送られ、本人に届く前に阻止されています。
ホワイトハウス宛の郵便物は全て場外の施設で事前に仕分けや検査を行った上でホワイトハウスに届けられます。
ホワイトハウスに届けられるまでの2回の検査でリシンが発見されました。
今回の事件に使用されたリシンですが、これまでもテロ計画などに使用されたことがあるようです。
では、一体「リシン」とはどんな物質なのでしょうか。
リシンは2種類存在する
この事件を聞いて「なんでリシンに毒性があるんだ」と感じた人は少なくないはずです。
それもそのはず。
「リシン」はα-アミノ酸の一つで必須アミノ酸と呼ばれる物質です。
人が生きていく上で必ず摂取することが必要な必須アミノ酸なのになぜ毒性があるのかと感じたのではないでしょうか。
学校で習ったリシンは英語では「Lysine」と表記します。
今回話題になったリシンのスペルは「Ricin」です。
そして、リシン(Ricin)はタンパク質であり毒性を有しています。
どちらも日本語では「リシン」と表記しますが、アミノ酸とタンパク質で全く異なる物質なのです。
猛毒リシンとは
リシン(Ricin)はトウゴマの種子に含まれるタンパク質です。
天然に存在する毒物で、トウゴマの種子は幼児なら5~6粒、成人なら20粒ほどで死に至る可能性があるとされています。
あくまでも可能性である理由は、有毒タンパク質であるリシン(Ricin)はそのほとんどが腸で分解されるため種子を飲み込んだ場合の死亡率は10%以下であると言われています。
しかし、これは種子の状態で飲み込んだ場合の話で、リシン(Ricin)自体は強めの毒です。
人体における推定の最低致死量は体重1kg当たり0.03mg。
体重70kgの成人男性であれば2.1mgあれば死に至る可能性があります。
世の中にはもっと強い毒はたくさん存在しますが、天然毒で2.1mgはなかなか強い部類の毒なのではないでしょうか。
塩ひとつまみより少し多いくらいですから。。
症状と解毒方法
経口摂取した10時間後程度で消化器系に影響し吐き気、嘔吐、腹痛などが初期症状として発症します。
リシン(Ricin)はタンパク質合成装置であるリボソームに作用し、タンパク質の合成を停止させるという働きをします。
これが原因で摂取した生物の生命維持を困難にさせることで死へと追いやるのです。
吸収率は低いため、経口投与よりも非経口投与の方が致死率は高いです。
(銃に込める、ナイフに塗るといった手段でしょうか。)
万が一致死量を摂取した場合の解毒手段についてですが、
現在リシン(Ricin)の解毒剤は存在しません。
トウゴマの種子をそのまま20粒摂取することはまずないと思いますし、種子から毒のみを分離して摂取することなんてもっとないと思いますが。。
今回のように暗殺の道具として摂取した場合を除き、トウゴマの種子を大量に摂取しない限り解毒剤が必要な場面はないかと思います。